『物流を改革する』 考え方とアプローチについて



/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/   コンサルの現状把握   _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

○コンサルがクライアントの相談に応じて適切なアドバイスと新しい発想や仕掛けのきっかけを生み出すには、クライアントの事業そのものを深く理解しなければなりません。初めは新入社員レベルから短期間で経営者と同等の現状認識ができる様にならなければ、アドバイザーにもなりません。事業のベテランである必要はないと思いますが,収益構造や業務プロセスの全体像を理解できなくては、「力量不足」の烙印を押されます。

○そこで、事業の実態を理解する手段としての「現状分析」ですが、様々な問題解決の理論手法にも共通するのが、「図解」と「マニュアル化」です。サラリーマンはどんなところで仕事を人に見せることができますか。売上金額でしょうか、企画のデザイン図でしょうか、お客サマの評判でしょうか。この様に考えてくると、私たちの様な純粋サービス業者は、自分で見聞きしたことをクライアントに「見せること」が必要になります。「仕事してんの?」に対して、図解や文章で仕事の実績を証明する必要があります。

○という狙いと、「クライアントに見て戴いて」ご意見を伺う、それを繰り返す。という事業内容の図解化がまず大切になります。

○そこで、図解化パソコンソフトが大活躍するわけです。まず、クライアントを中心に置いた、関与先会社、倉庫、工場、代理店、店舗、お客様を大きな1枚の紙に仕上げます。電話やコンピュータ、FAXなどの「情報の流れ・量」と「商品や材料の流れと量」を矢印や記号で書き込んでいきます。・・・・これが『物流に関わる流通環境図』つまり、クライアントと市場関係が把握できる様になります。あとから、マーケティング情報として競合の数・規模、市場の規模、成長性などを付属させていきます。

○「鳥の目での把握」を『流通環境図』でできるようになると、新入社員レベルを卒業できて、ようやくクライアントと対等な議論ができる様になります。なぜ、どうして、の質問攻めから、事業の成功要因を覗き見ることができるようになるのです。会社というのは色々な人材と業務で複雑に絡み合っている生き物です。生存理由が収益なのは明らかなのですが、収益をもたらすのは、常に市場でありお客様であるわけです。給料も経費も利益もみんなお客様の財布から出てくるわけですから、事業の把握は自社の情報と物の動きとお客様の配置で押さえることがまず初めに必要になります。

○「蟻の目」で事業を見るには、実際の見聞と組織図、組織分掌、業務マニュアル、伝票の流れ、システム機器の操作時期などで、細かく追っていく事になります。

『業務フロー』を一般的な定規でなるべく詳しく書き上げていく事で、社内の動きがどうして生き物の様なのかが分かる様になります。時間の流れと場所の関係が図解の中で整理できれば、完璧でしょう。なかなか自社で完成版を作っているところが少ないので、ここにはずいぶんと時間が掛かります。

○流通環境と業務フローが2点揃いますと、ようやく事業の構成がハッキリとするようになります。お金の動き、規模、会社の様々な設備や人の動きまでが明らかになります。クライアントをまな板の鯉 ごとくに紙の上で考える事ができる様になるわけです。お互いに意見交換する際にもこれらの図が非常に効果的です。もちろん、初めから完成品を求めるので無く、徐々に修正を施していけば良いわけです。会社を紙に書くのは、とても難しくけれども大切な作業です。

○なぜ、どうして、の疑問が沢山集まってきますから、直接ご担当者にお出で願ってインタビューになります。同時に、皆さんの改善期待が我々に集中するわけですので、ご要望をなるべく多く、詳しく、不平不満も建設的意見も合わせてお伺いする様にします。ポイントはただひとつ。ご発言の種類が「意見」か「事実」かを間違えない事です。

○現状分析では、「定性的状況把握」「定量的把握」が必要で、意見・感想・観察記録と事実関係です。特に事実は数値や時間の裏づけが必要になりますが、集めやすいものです。ところが、インタビューでは先入観念や思い違いというものから、ご発言が意見と事実がごちゃになることが非常に多いのです。区分が大切です。

○インタビューの記録は、同一内容が前後したりするのでカードのようなもので整理する事がポイントかもしれません。私はKJラベルを便利に使っています。発想のヒントに使うのではなく、並べ替えが便利という事で利用価値はあると思います。時間列の発言録だと分類が大変になります。

○図解と意見、事実の収集でクライアントの事業そのものを客観的に整理する事ができたことになります。より詳しく調べる事も必要ですが、徐々にということでひとまとまりにしておきます。インタビューでは業務上の困った問題、考えている将来への課題 というのが、熱心なかたからは登場しているので、これも忘れずに記録しておきます。

○問題点とは、基準値や目標値に対しての障害度合いや困った点を示すことにします。「困らなければ」問題点にはなりません。問題の定義を誤ってしまう事がよくありますので、次のような状況説明文に注意しましょう。

 

 

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/   何が問題なの?   _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

×残業が多くていやになる → これ、単なる事実状況。仕事だから仕方ないか?

×雨が降ると仕事が増える → これも習慣的な事実。一年の半分は雨ですね。

×業者の料金が高い → 比較していても、影響がわかりません

×忙しくて手が回らない → 忙しい、手が回らない、困った理由がわかりません

×月末に仕事が集中してミスが増える → よくある見本。問題点でもなし、

○『〜するのに〜なので、〜できない(〜が困る)』という表現にまとめられてこそ、初めて基準値や到達点が明らかになって、現在が未達成状態である事になります。これが、問題点の表現になります。

○残業が多いのは、どこかに手がかかりすぎる状態があるか、もしくは能力以上の仕事が投入されている事になりませんか。役割分担がアンバランスになっていたり、時間的に集中したり、手間が掛かりすぎていたり、能力が不足していたり、連絡が遅れたり、その他にも何かの原因でおせおせになっているのでしょう。

○「残業が多い」という事実に目を向けて、「なぜ、なぜ、なぜ」と連続問合せを試みていくと、問題点がだんだん明らかになってきます。事実を押さえ、背景を思索すると(事実の原因を予測すると)問題点が整理できてくる様です。

○これらのような問題点を集めたり、意見を求めたり、再確認したりするためにどうしても必要な資料があります。会議のコツと言うか、重要な心構えは、それぞれが同じ興味と関心を集める事です。一人だけやある組織だけに通用する言葉や言いまわしは、誤解の元ですよね。同じように、皆が知っているはずの事が常識ではなく、極めて特殊な状況を表している事が良くありますよね。

○そこで、問題分析に絶対に欠かせない資料が、実は業務フローや作業手順書、そして事業の構成を表す外部環境図(物流の場合には、物流環境図)というものがそれです。同じ資料や図解、イメージマンガを眺めながら問題点を議論しなければ、それぞれの小さな疑問や誤解を生み出すばかりで、効果的な議論ができないものです。

○新聞記事を読んでも感想は十人十色であるように、毎日の業務の理解や解釈も様々です。問題だと思う人もあれば、普通じゃないの という感想を持つ人もありますが、図解や数値資料では共通の観点で物事を見る事ができるというものです。

○見る診る観る看る 業務フローや外部環境図を見ながらの討議では、これくらいの「見方」を使い分ける必要があると思います。どこに問題が潜んでいるか、どんな問題がありそうなのか という推理も必要な能力かもしれません。けれども、それは時間を掛ける事によって対応が可能ですから、共通認識を持つための資料が必要なのです。

○仕事上の問題点をかなり慎重に選んでいっても、沢山の問題児が集まってくる事でしょう。今度は、「なぜそうなるのか。誰が、何が悪いのか」という犯人探しのステップに入ります。犯人の居所がわかったとしても、逮捕まではまだまだステップが必要です。けれどもめぼしをつけたり、姿を類推しておく事は、逮捕に不可欠ですよね。

○「〜が〜なので、〜できない」という表現で問題点を整理できたとすれば、原因を遡及していく作業は比較的容易にできる事ですが、算数の応用問題を解く方法と同じで、なかなかきれいに公式を当てはめることは難しいでしょう。原因を探る事だって、時間をかける必要もあるかもしれません。問題点の一覧表を大きく作って、皆でなぜかを繰り返す事が一番の近道になる場合もあるのです。すべては時間が解決する事の大切さも覚えておきたいものです。

 

 

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/   コンサルの改善発見   _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

○やりたくない仕事があふれ、同じようなことを考えている従業員が多いのに気がついたとき、「改善しなくては」という思いが頭を上げてきます。伝票が多い、時間がかかる、やりなおしや緊急が頻発する、図解したら情報線と物流線が複雑に絡まっていて、判断が遅れる、伝達が止まる、書類が増える、待ち時間がどんどんたまる、・・・・。どうして、シンプルにクレバーに、スムースに行かないのか。

○KAIZENNの目的は、
『安全・単純・低廉・確実・迅速』とか『真・美・正』『標準・容易・視覚化』などで点検できると思います。感情や個人的な意見はこの際、捨てた方がいいかもしれません。何故なら、改めて図解や問題一覧表を見るまでもなく、個人的な思いはず〜っと昔からあったはずなのに、「考えないで仕事をするのがラクだから」と現状を肯定している人々はとても多い(自分もそうです)

○だから、KAIZENNの発見は公衆の面前でなくてはやってはいけません。無駄な仕事、無意味な仕事、繰り返される失敗の仕事は、それ自身はちょっと前まで十分に価値ある、大切な仕事であったはずなのです(誰かサンにとってはのことです)

○タイミングのずれ、遅れ、不充分な情報による仕事の品質の低下、こんな大まかな原因でも十分に大きな不都合とやりなおしの悲劇を生み出しているはずです。前にも「品質不良」は、企業活動の30%のコストを招いている との例をあげました。(6σという理論は、この不良品質の防止がコストを減らすという効果から取り組まれている企業が多い)

○KAIZENNは誰もが本当は気がついている、けれどもかまけているのが実情です。自分の部署では解決できない、原因は他部門にある、しかたがない、なぜだか分からない、・・。それ以外の改善期待は、むしろ危険です。

○何を改善するのか分かっているものを改善する なんて、おかしな話と思われるかもしれませんが、人間の活動はすべてに裏づけがあって、理由があって、遠慮していて、影響を及ぼすだろうことが分かっていて、でも少し恥じながらやっている事が多いのです。改めて、図解と箇条書きで内容を皆で再確認してみることが、何より優先すべき事です。誰も責めてはいけないのです。

○そういうことから、私たちは露骨なKAIZENNを薦めません。あえて小さな無駄、無理、ムラ、無茶を止めることを提案するにとどめてしまいます。だって、KAIZENNをすることが、どれほど今までの仕事をしていた人を傷つけることになるか想像ができないからです。

○KAIZENNの効果を視覚化、数値化すること をむしろ重視しています。無駄、ムラ、無茶によるやりなおしがどれほど時間を、人を、設備を消費する事になっているのかを、前にも取り上げた「活動基準原価計算」手法で数値化してしまいます。『KAIZENNによって止めたら○○○円の節約』という計算を何度も繰り返します。手法は単純で、その仕事や作業に従事している人の人件費単価を聞いて、所要時間と回数を予想して掛けるだけ。

○例えば、情報伝達に不可欠な伝票の作成が遅れる事による電話連絡は、1回あたり3分として、課長職なら時給6000円相当ですから、1回300円。これを毎回繰り返すと、すぐに数万円のロスにつながります。同じように、人の無駄無理ムラは、分換算してロス費用の積み上げをすると、びっくりするほどの金額になり、「そんなら、パソコン買えるじゃないか」「返品を処理するより、直接廃棄したほうがいいじゃないか」という具合に打算的になれるのです。

○KAIZENNの目的は金額表示にあると言えます。会議の出席者の時間給を合算して、結論が出ない会議を中止する事は、何も焼き鳥で上司に絡みながら懇願するようなことは必要ないのです。こっそり入り口に「今回の結論を出すには×××円のコストがかかりました」と匿名掲示すれば議長は考える事でしょう。

○今回はずいぶん乱暴な書き方をするなぁ と思われた読者の方へは、もう一度活動基準原価計算の記事を再読していただくことをお進めします。小さなKAIZENNの積み上げは、人のこころをセコセコさせてしまいます。疑心暗儀の探求しんなんて不要です。なぜ何故問答を繰り返すにも限度と対象の重要性があります。すぐやるのはロス計算、実行は影響を特に人物に焦点を当てて、だれも辛い立場にならないように考えてから取り組みましょう

 

 

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/   コンサルの危機対策   _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

○HACCP(ハセップ)という用語をご覧になったことがあるでしょうか。主に食品業界でかつてのO157対策やPL対策として、アメリカの宇宙食品製造ノウハウを利用しての衛生管理手法です。もっとも、これもISOシリーズのように哲学的な意味が強く、具体性に欠ける理論みたいです。取り上げたいのは、このハセップの意味です。

Hazard Analysis Critical Contorol Point(危険要因分析による重点管理点)というものです。簡単に言うと、食品製造現場において、「食中毒」の発生を引き起こす重大な危険場面を分析して、その場面において徹底的な対策を施す(消毒や汚染防止)というのがこの言葉の意味です

○食品の事故は、企業にとって営業停止や賠償問題など致命的な影響を及ぼす事になります。HACCPはその意味で、食品企業への危機対策方針を提示する重要な問題解決手法であるわけです。食品製造の現場では、かねてより省力化が進み、作業の標準化と共に従業員のパート化もどんどん進んでいます。「日々KAIZENN」「原価低減活動」そのものが、食品業界では日常的に行なわれています。

○このような状況では、いつも新しい改善挑戦が行われる事になるのですが、失敗は品質や衛生面に直接影響してしまう事がおき得るのです。そこで、HACCPを学んだマネージャーは、改善の効果と共にリスクや今まで想定していなかった事故の想像を、ものすごいエネルギーで検討する事になれています。

○KAIZENN は、代表的なものとして「止める」ということがあると思います。手書き伝票、メモ、報告書を止めてしまう。売掛限度額の調査をシステムで自動的に行い、人的な点検を止めてしまう。〜止める というのは、最も効果的な改善に見えます。

○HACCPの考え方で、この「止める」という活動を見なおすと、次のようなチェックを行う事になります。 

 ▲その活動はなぜ行なわれていたか(大義名分であろうと、明確な理由の定義)

 ▲その活動から、どんな情報が提供されていたか

  (はんこを押す→書類を通じて、組織の動きが分かる)

 ▲止めることの全体プロセスでの効果は何か(時間短縮、単純化だけか)

 ▲止めると何が起きるか(資源の無駄が排除されるだけか)

 ▲止めたことによるほかのプロセスへの影響は何か(困る人は出ないか)

 ▲影響はどこまで広がるか(困った人は、どんな行動にでるか)

こんな風に、止めることのプロセスでの影響は、どうしても表面的になりがちですが、HACCPマネージャーは「潜在的な」危機対策までも考慮に入れようと、必死に思考を繰り返す習慣が身についています。

○問題解決手法で一時有名だった、「ケプナ-・トリゴー手法:KP法」というのも、改善実施計画の立案前に、シナリオを幾つか描いて、危機対策の重要性を改めて確認する事を薦めています。いいと思って始めた改善活動が、思わぬ落とし穴にはまってしまう笑い話は、他人事ならいくつでも見聞する事ができるでしょう。

○自身の場合はどうか。HACCPの意味だけでも使って、危機対策に準備する事は必要でしょう。もっとも、そのために企画・計画作業が長引いてしまって、肝心の改善実行ができなくなった という逆の笑い話も聞いたことがあります。製造工場でのKAIZENN活動は長い歴史がありますが、物流現場のような比較的新しく、そしてサービス活動では失敗の蓄積が少ないのかも知れませんね。

○私たちはKAIZENN活動のお手伝いをする際に、開始のスピードを敢えて遅らせる手段に出ることが多いです。当たり前のことでも、省略や中止、短縮は今までの活動の意味を本当に理解してからでないと、止めることに大変な躊躇をします。なぜなら、哲学的にも『存在はそのもので合理的』というように、誰もが認める無駄が生き続けていることは極めて多いことなのです。

○調査活動での一見した無駄の排除は、そのことが「情報の紛失・逸脱」にならないかどうかの検証がとても重要です。単純な中止改善でも、従来のプロセスフローと新しいプロセスフローをきっちり、比較対比して、検討会を持つべきでしょう。イメージを豊かに持って、潜在的なリスクもどんどん検討すべきです。だめでもやりなおす なんて、いき方よりは慎重派に徹した方がこの場合は有効でした。いざ、実施というときには、思いっきり頑固で優柔不断な性格に変わった方がいいと思います。

 

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/   効果の試算   _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

○社内調整業務に疲れる話題は、面白い話しとしても沢山の材料があります。脱税の過失事件が過去の経営者に疑義があり、そのために清廉潔白な会計士が、売上管理の厳重な指導を重ねていました。いわく、「販売の決裁責任を現場で重視する」ということで、この会社は雑貨の卸売りだったのですが、受注メモ、受注入力結果のチェックリスト、物流への出荷指図書の3点セットに『すべて所属長の押印が必要』となったわけです。

○何の疑いもなく、担当者は受注セットを上司の決裁箱に入れます。離席していると、山の様に書類がたまります。得意先からの追加注文があると、書類を捜して3点セットを追加して、箱に入れます。次々と重なり、押印が遅れて、受注日から何日も過ぎてしまう事が日常茶飯になりました。

○数ヶ月間のクレームの嵐があっても、この儀式に変更はありませんでした。経理部も無干渉でした。受注担当も知恵を出し、物流も融通を利かして、伝票のコピー、FAXで商品を出荷し始めました。クレームが自然に収まった頃に、月次棚卸での在庫誤差が莫大な金額になりました。2重出荷(同一品が2回出荷)の実態がわかるまでは、あまり時間が掛かりませんでした。

○すべての書類に押印が必要だ という実務を超えた運用ルールの見直しが、改善とは言えないかもしれませんが、存在は合理的 として、なぜそれが本当に必要なのか ということに論点が届かないことが大きな組織になると起こっています。

○通販会社で、返品商品の運賃を着払いとして物流が立て替えていました。1ヶ月分の仮払い経費もばかにならない金額でした。精算は、経理部、営業部、商品開発部、社長室、財務担当役員の全員の押印が揃わないと、物流部へ届きません。しかも、仮払い期限は1ヶ月と定めていたので、入荷担当者の個人立替額がどんどん膨らんでしまいました。3万円も持ち出しているうちに、退職する事になったのですが、精算が終了したのは退職金よりも遅かったとか。

○百貨店向け婦人服メーカーでは、専門店の伝票作成とデパート毎の値札作成に30名の事務職が勢ぞろいしていました。1日5000点の商品を出荷するのに、伝票値札が必要です。値札パソコンは1デパート専用なので、15台もあり、統一伝票の印刷機はありましたが、専門店用では手書き対応でした。

○ハンコを押す事を止めれば、書類も商品も滞留しません。手書きを止めてシステム発行すれば、書き損じや人員削減になります。KAIZENNの代表的な事例です。前前から誰でもが気が付いていてなかなか止めれなかった仕事を見なおして、情報システムで改善するように考えました。

○いくらの効果があるのか。KAIZENN委員会での当然の質問です。ノーツのワークフローシステムに電子ハンコを導入するのに80万円、値札発行パソコンに汎用ソフトを入れるのに200万円、伝票印刷機を5台増やすのに100万円の投資が必要でした。

○手作業での稟議書(経費伺い書)の閲覧と配布、持ち回り審議にどれほどの時間がかかるでしょうか。1枚の決裁に5分として、関連者の人数は12名、配達に3分でも、100分。役職者の時間給は、年俸1000万円としても年間2500時間で、時給4000円。100分なら6700円。経費伺いや稟議書は年間100通で、67万円。

○値札の発行は、10枚1分としても、チェックに同じ10枚1分。毎日3000枚の発行で、300分、5時間。パートサンの時給は1200円としても、毎日6000円。毎月156千円。方やパソコンソフトのリース料は、毎月2万円で、管理者が必要としても十分にペイバックが可能。

○デジタルピッキングシステムの導入に500万円掛かったとしても、ピッキング効率とミス率が向上すれば、2年程度の償却期間で元が取れる。しかし、今年は予算が取れない、・・・。どんどん資金効率が下がってきて、キャッシュフロー経営が危うくなる、・・・。

○効果の試算は、作業効率に影響するときはこんな風に時間給での差額を計算する事が多いようです。根拠を明確に、効率を明らかに、などと言われたときには、このABC手法が良いでしょう。最も、本来は時間給換算だけでなく、設備の償却や旧システムとの比較も詳細に計算するのですが。

○改善計画が資金計画にリンクできるようになると、KAIZENNも経営の一部にサマ代わりするようになります。前回のリスクヘッジと合わせて、慎重な計算機の使い方をお勧めします。

 

 

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/   物流部の使命   _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

○物流を制して競争に勝つことが話題に上がっています。
セブンイレブンは全国規模で商品の配送ネットワークを、自社投資でなく窓口問屋という他人資本で構築しました。もちろん、POSと衛星通信を駆使した商品の売れ行きを管理して、無駄のない発注と店頭への送り込みのシステムは自身で投資しています。

○アメリカのLLビーンやアパレルは、日本の受注センターと本国の物流基地を専用回線で結んで、時差を越えた配送スピードを武器にしています。コンピュータ業界の直販システムは取り上げるまでもなく、工場や営業マンを持たない産業として勝ち名乗りをあげつつあります。一連の新しいビジネス構造は、情報機器や通信の技術以上に、効果的に配置された物流倉庫とスピードと精度を保障する物流作業に裏付けされています。

○金型の試作などという、職人産業をネットワークと配送サービスで全世界に得意先を開拓している大田区の地場産業、究極の1個作りの入れ歯製造を、スケジューリングの技術で、どこよりも速く作りあげた医療サービス産業。そこにも、物流担当者の笑顔があります。

○どこまでが物流担当の仕事なのか という質問は愚問かも知れません。経営者に直結した管理会計の、キャッシュフローの動きに直接関与しているのが物流マンなのかもしれません。

倉庫の管理者、作業の手配、配送の段取り、システムのデータ入力担当、・・・。

従来の業務だけを見ていた物流担当から、他業種の戦術を取り込み自社のマーケティングのすき間を開拓していく、戦略マネージャーの役割が注目されています。

○もともと、組織マンとしての能力には、計画立案、運営、危機対策、改善能力 などの要素が要求されているものですが、スーパーサラリーマンでもなければ、万全の能力を発揮できる人材は少ないようです。ましてや、大きな組織になればなるほど、個人のスキルが活かされる場面が少なくなっているようです。

●ズバリ 物流マンの期待されるスキルとは 

☆現状から将来図への理想的な展開を語れるシナリオライター

☆運営上手な工程管理マネージャー

☆毎日頻繁に起きる事故のスピーディーな解決をするベテランネゴシエイター

☆物流をQCテクニックで日々改善していくコンサルティング能力

☆新しい商品、サービスに的確な注文を出せるアドバイザー

☆経営層に問題指摘と改革構造を提案できるプレゼンテーター

こんな能力を幅広く求められているのが、現在の物流マンだと思います。事実、私たちコンサルも物流スタッフへの教育メニューや支援範囲をこのように求められています。物流データやコストの分析でお茶を濁すような仕事は、もはやなくなってきています(昔は、物流コストの調査や物流センターの設計のための物量把握という仕事があったものですが)

○堀場製作所の社長が「おもしろおかしく」というのをスローガンに挙げています。

仕事にもっと創造性を というのが本来の趣旨なのでしょうが、私もそれに習って、物流無責任論を取り上げて、「もっと いい かげんに」と思います。製造責任、販売責任、財務責任、労務責任、勤労責任、一切の責任や義務を負わずに、縁の下の黒子として何にでも口をはさめて、かつ知ったかぶりもある程度できて、かつ代金清算の具体的な手段を提供している最前線としての緊張感を感じながら、経営にも口出しできる立場が、物流の席にあるのではないかと思っています。

○在庫責任は販売や購買にあるのを承知で、日付や売れ行きを他人事のように指摘できますし、返品を通じて市場の人気の動きを営業に説教できる。こんな、考えてみればお気楽な仕事はないのではないでしょうか。

○工夫の苦労は、相手が人間やドライバー、情報システムSEですから、苦労した分成果も期待できるし、生産性という能力値も自動的に記録と評価が出されて、初めて逆上がりができたような感動がいつも味わえるのです。

○経営者は自社の物流を図解や数値で捕らえている人が少ないので、控えめな態度でセンターを訪ねてきます。冥利に尽きる瞬間です。

○e-ビジネスがどんなに発展しようが、売買に商品製品はつき物で、物流問題が消えることはありません。気まぐれな消費者の返品交換修理の要望も、エコ思想からなくなる気配はありません。目の前のモノに愛着が薄くなるわけもなく、ますます物流部門の幻想は広がるばかりです。

 


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