避雷針
一.今にも降りだしそうな雲行きを
    気遣うように避雷針は
             天を仰いでいる
   時の過ぎゆく不気味な静寂に
    頭を抱えながらもじっと
             天を仰いでいる

     ひと雨くればすべての煩わしさから
       解放されるかもしれないのに
          何故君はそんなに怯えているのか?

     雨が上がればさわやかな虹が
       空を飾ってくれるだろうに
          何を君はそんなに恐れているのか?


二.幾たびの稲妻の走る中を
    たじろぎもせずに避雷針は
             天を仰ぎつづけてきた
   そのあまりにも長い年月の中で
    すっかり年老いていつのまにか
             錆付いてしまった

    避雷針よ
       君はそこで幾度
          流れ星に願いを込めたことだろう

    報われぬむなしさを
       痛いほど噛みしめながら
          今日も天を仰ぎ続けている

  そんな避雷針の上空を
   一羽のからすが弧を描きながら
      嘲笑うかのように泣いています