一.耳の聞こえぬ バイオリニスト
   咽喉を痛めた シンガー
     僕はそんな彼らをいつも
       心のどこかで嘲笑ったりしていた
         彼らに何ができようものかと

   目の不自由な アーチスト
    時代遅れの   デザイナー
     僕はそんな彼らをいつも
       心のどこかでせせら笑ったりしていた
         彼らは彼らなりに力強く生きようと
             一生懸命なのに

   あき盲同然のこの僕が
      何不自由のない生活に胡坐をかいて
          その自分の愚かさをも顧みずにいました
     
二.肩を壊した  ピッチャー
   拳を痛めた ボクサー
     僕はそんな彼らをいつも
       心のどこかで嘲笑ったりしていた
         ドジで間抜けなピエロでしかないと

   指の足りない ピアニスト
    筆を捨てた   ライター
     僕はそんな彼らをいつも
       心のどこかでせせら笑ったりしていた
         彼らが人一倍苦しみ闘い抜いてきた
             ことを知ろうともせずに

   堪りかねて話しかけた老人の言葉に
      我が身にふりかかった突然の不幸に
          ようやく汗のまぶしさに気がついたみたいだ

ベートベンの勲章