一.美しく着飾った一冊の本が
人々の目を奪った
華やかな表紙の微笑は
見事な程に人々を魅了した
人々はいつもこの本を手に携え
時を忘れ、ひたすら読み続け
その感動に酔いしれていた
本はとても幸せだったに違いない
けれど
一度、読み終えた一冊の本は、
輝きを失い、顧みる事さえなく
あっさりと埃の中に葬られてしまう
二.もう誰もこの本を
読み直そうとはしない
わかりきった結末に
目を通そうとはしない
そんな本の哀しみを誰も知らない
華やかな表紙に較べ
なんとも淋しそうな裏表紙
大きな本棚の片隅でふと
ため息をついている