■障害者自立支援法の抜本的見直し(報告書)■

平成19年12月7日
与党障害者自立支援に関するプロジェクトチーム


T はじめに

○ 本プロジェクトチームは、先般の連立政権合意で、「障害者自立支援法について抜本的な見直しを検討するとともに、障害福祉基盤の充実を図る」とされたことを受けて、障害者自立支援法施行後3年目の見直しも見据えながら議論。

○ 障害者自立支援法は、施行後1年半が経過し、サービスは着実に増加。

○ 昨年12月、与党は、今回の改革に伴う軋みに丁寧に対応するため、国費総額1200億円の「特別対策」を決定し、利用者負担の更なる引下げや事業者に対する激変緩和措置等を実施。



U 抜本的見直しの視点

○ 障害者自立支援法の抜本的な見直しの全体像を提示した上で、法施行3年後の見直しに向けた基本的な課題とその方向性を明示。また、当事者や事業者の置かれている状況を踏まえ、特に必要な事項について、緊急措置を実施。

○ 介護保険との統合を前提とせず、障害者施策としての在るべき仕組みを考察。

○ 利用者負担については、低所得者の負担を更に軽減するなど、負担の応能的な性格を一層高めるとともに、特に障害児を抱える世帯の負担感や子育て支援の観点を考慮。

○ 障害福祉サービスの質の向上、良質な人材の確保と事業者の経営基盤の安定を図るため、障害福祉サービス費用(いわゆる報酬)の額の改定の実施を明示。

○ 障害福祉サービスについては、障害者が地域で安心して暮らせる社会の実現に向けて、地域の受け皿づくりや入所施設の拠点的な役割を重視した基盤整備を進め、利用者の立場に立って、簡素で分かりやすい制度体系を目指す。



V 見直しの方向性

1 利用者負担の在り方
〈現状と課題〉
○ 障害者自立支援法による利用者負担は、最大1割の負担となっているが、所得に応じた一月当たりの上限額がきめ細かく設けられており、応能負担の性格が強い。一方、利用者負担の仕組みが分かりにくいとの指摘がある。

○ 「特別対策」により上限額が更に引き下げられた結果、低所得者の負担水準は平均5%を下回っている状況。しかしながら、食費等の実費負担があるほか、法施行前には低所得者の居宅・通所サービスに利用者負担がほとんど無かったことに比べると、なお負担感。

○ 「特別対策」は、利用者負担の軽減に大きな役割を果たしているが、平成21年3月までの措置であることから、それ以後の取扱いを不安視する声。

○ 利用者の所得状況を見ると、課税世帯の割合は、障害者が約4割であるのに対し、障害児は約8割となっており、「特別対策」実施後もその効果が行き届かない世帯が多いなど、障害児のいる世帯の負担感は依然として強い。また、18歳、19歳の場合に、様々な要因で負担が増えるケースがあるとの指摘がある。


〈緊急に措置すべき事項〉
○ 障害児の利用者負担については、子育てを支援する観点も含め、負担上限額の軽減対象となっていない課税世帯にも対応する。

○ 低所得者層の居宅・通所サービスなど、利用者負担については、一層の激変緩和を図るため、更に軽減。

○ 「特別対策」による利用者負担対策については、障害者自立支援法の抜本的な見直しとの整合性を確保しつつ、平成21年度以降も実質的に継続。

○ 障害福祉サービスの負担上限額の段階を区分する所得は、現行法は「世帯(家計)」を単位としているが、他の社会保障制度や税制における取扱いとの関係を整理しつつ、個人単位を基本として見直す。


〈法施行後3年の見直しに向けて検討を急ぐ事項〉
○ 利用者負担を支払った後に手許に残る金額については、施設と在宅のバランスに配慮しつつ検討。

○ 障害福祉サービス、補装具及び自立支援医療の利用者負担の合計額に上限を設けることについては、医療保険における高額療養費との合算も含めて検討。


2 事業者の経営基盤の強化
〈現状と課題〉
○ 障害福祉サービス費用については、新たなサービス体系への移行や日割り化に伴う激変緩和措置として、「特別対策」により従前収入の9割を保障。

○ しかしながら、これらの事業を実施するために各都道府県に設けられた基金の執行状況を見ると、未だ事業が軌道に乗っていない自治体も多く、一刻も早く各事業者に効果が行き渡るようにする必要。

○ 日割り化に伴って、大半の事業所で収入が減少していることや、入院や帰宅に伴い利用日数が変動することなどの問題点が指摘。

○ また、人材の確保が困難となっているなどの問題点が指摘。

○ 就労継続支援、ケアホーム、重度訪問介護、行動援護、児童デイサービスなどの障害福祉サービス費用や基準についても問題点が指摘。


〈障害福祉サービス費用の額の改定の実施〉

○ 障害福祉サービス費用の体系については、利用者、事業者双方の視点から、在るべき姿を検討。

○ 障害福祉サービスの質の向上、良質な人材の確保と事業者の経営基盤の安定のため、平成21年4月に障害福祉サービス費用の額の改定を実施。

○ このため、事業者の経営実態など基礎的なデータの収集・分析が不可欠であり、公平・公正な経営実態調査に早急に着手するなど手続きを進める。


〈緊急に措置すべき事項〉
○ 利用者にとってのメリットを考えて、サービス利用についての日払いは維持しつつ、サービスの低下や職員の処遇悪化がないよう、事業者にとって経営の安定化を図る緊急的な改善措置を実施。

○ 具体的には、特別対策により従前収入の9割を保障しているが、それを更に上回るよう、通所サービスについての対応の拡充や空床保障などの様々な対応を行う。

○ 加えて、「特別対策」により各都道府県に造成された基金の使途や事業の実施基準を見直すことにより、就労継続、重度障害者への対応、児童デイサービス、相談支援等の事業、諸物価の高騰等への対応について支援措置。


○ 小規模作業所等については、円滑に法定事業に移行できるよう、コンサルタントの活用など「特別対策」を一層有効に活用するとともに、法定事業に移行する際の基準の見直しなど、更なる移行促進策を講ずる。また、小規模作業所の移行のための新たな受け皿の在り方についても検討。


〈法施行後3年の見直しに向けて検討を急ぐ事項〉

○ 本年8月に改定された福祉人材確保指針を踏まえ、適切な給与水準の確保、報酬の設定、人材の育成・活用(キャリアアップ)システムの構築などの取組みを促進。

○ 入院・入所者の地域移行の受け皿ともなるグループホームなど住まいの場の確保に対する支援方策を検討。

○ このほか、現在実施している事業者対策については、障害福祉サービス費用の額の改定や新体系への移行の状況等を踏まえた上で、その後の必要な対応につき検討。


3 障害者の範囲
○ 発達障害者を始めとする「障害者の範囲」については、引き続き検討。


4 障害程度区分認定の見直し
○ 障害程度区分認定の見直しについては、早急に実態調査に着手するとともに、知的障害、精神障害を始め各々の障害特性を反映した調査項目と判定基準となるよう、大幅な見直し。

○ 障害程度区分に応じたサービス提供の仕組みの在り方については、地域移行の推進、本人や家族の置かれている環境や意思を踏まえた選択、公平性やサービスの必要性等の視点から検討。

○ その際、現に施設に入所している者については、希望すれば継続して利用できるよう対応。


5 サービス体系の在り方
○ 障害児のサービス体系の在り方については、児童の福祉の向上、自立支援、障害児を抱える家族の支援、保育施策など児童に対する一般施策や特別支援教育との連携の強化等の視点から検討。その際、児童相談所による措置との関係や、障害児のサービスの実施主体の在り方にも留意。

○ 就労支援等の充実方策、重度障害者への支援や移動支援等の在り方について、引き続き検討。

○ サービス体系の在り方については、施行後3年の見直しにおいて、簡素で分かりやすい仕組みを目指す。

○ 障害者に対する虐待の際の対応の明確化を図るなど、障害者の虐待の防止等のための制度について検討。


6  相談支援の充実
○ 地域移行の推進の観点から、地域自立支援協議会の法令上の位置付けの明確化や総合相談窓口の充実など、相談支援体制を強化する。その際、民間の社会福祉法人やNPOなどの活用を図る。

○ 現行制度の仕組みや「特別対策」を分かりやすく説明するなど、制度の一層の定着を図る。


7 地域生活支援事業
○ 地域生活支援事業については、地域の特性を踏まえつつ、サービスの均てん化を図る観点から、実施状況を検証の上、必要な対応。


8 就労の支援
○ 障害者の一般就労を促進するとともに、「工賃倍増5カ年計画」を着実に推進。

○ 安定的な仕事を確保するため、官公需を含めた福祉施設等への発注促進の取組みを強化。


9 所得保障の在り方
○ 障害者の所得の確保に係る施策の在り方について、就労の支援を含め、幅広い観点から検討を行う。
その際、社会保障制度全般の一体的見直しに関する議論との整合性や財源の確保を図った上で、障害基礎年金の引上げ(例えば2級の金額を1級並に、1級の金額は更に引上げ)や住宅手当の創設についても検討を行う。
(以上)