翔企画オリジナルミュージカル
パウロ
脚本:西村 由紀
演出:橋爪 貴明
日程:2001年9月12日(水)〜9月16日(日)
会場 : 博品館劇場
出演(プログラム掲載順・敬称略)
パウロ 吉野 圭吾 マリア 真織 由季 ステファノ 山形 ユキオ シモン 藤浦 功一 ローザ 鈴樹 葉子 リディア 寿 ひずる
神崎 順 祐樹 鎧 谷門 進士 山田 麻由 菊地 砂織 駒形 繭子 坪井 美奈子 柘植 陽子 楊 崇 宮澤 崇 後藤 大
あらすじ&感想
観劇日:9月15日(土) 19:00〜
J列25番
紀元60年代前半のこと、ひとりのキリスト教宣教師が、ローマ皇帝の命により処刑された。その名はパウロ。オープニングからいきなり♪処刑が始まる〜と歌いながら、キャストの方たちが客席通路を歩いていきます。
見物人の罵倒をあびながら、手足を縄で縛られ処刑される様子に圧倒されてしまいました。
パウロの生涯を見守り続けた親友のシモンが、死の直前にパウロの人生を回想する。腰が曲がってヨボヨボと歩いてくるシモンが、一瞬にして若い時代に戻る様子にビックリ。藤浦さんは最初は誰だかわかりませんでした(笑)。
遡ること30数年、若きユダヤ人パウロは優秀な人材として将来を期待されていた。彼はファリサイ派(ユダヤ教の多数派)の指導者になるべく、親友のシモンと共にエルサレムに旅立つ準備をしていた。旅立つ直前、パウロは親しくしている高級布地を商っているリディアから本来持っている良心を忘れないでほしいと諭される。権力を持つ人々がユダヤ教のモーゼ律法(ユダヤ教義の核心で、律法を守らない者には死罪をも課せられた)を都合良く解釈し、私服を肥やしていることを彼女は知っていた。このときの寿さんがすごくカッコイイ姉御!といった感じでステキでした。
旅立ちの前に待ちを歩いていたパウロは道に迷い、幼なじみのマリアに偶然再会する。しかし、マリアは生活の為に娼婦となっていた…ユダヤ教では体を売る事は大罪であった。懐かしさとは違う愛しさを感じながらも、律法に縛られるパウロは娼婦となったマリアを受け入れられず、マリアのほうでも自分の運命を呪っていた。
旅立つ前の日の晩、どうしてももう一度マリアに会いにいこうとするパウロをシモンが止める。このときの藤浦さん、壁に足をかけ逆さづりの状態で、「どこ行くの〜」と現れビックリ。彼女はもう自分達のお姫様だった彼女ではない!とシモンに言われ、またこれからファリサイ派の指導者になるべく修行を積もうとする自分には何もできないことを自覚するパウロ。自分の力ではどうする事もできなかった彼は、旅立ちの朝、リディアにマリアの様子を見てやって欲しいと言い残し、エルサレムに向けて旅立つ。
その頃、マリアの母親は危篤状態にあった。友人のローザは彼女達の為に、蜂蜜を届けていた。友人思いのちょっぴり姉御肌のローザ、鈴樹さんが素敵でした。自分達のような仕事をしている人間には、神様のお恵みなんてないというローザに対し、マリアは「あなたのような人ならきっと神様からのお恵みがあるに違いない」と言う。一旦、帰ったローザが道で偶然であったリディアを伴って戻ってくる。リディアはお礼にローザに手土産に持ってきた布地をあげる。その瞬間の「神様のお恵み」と言ったローザの嬉しそうな事…リディアはマリアの苦しかった心情を察し、優しく抱きしめる。リディアがマリアの為に置いていった布を母親に見せようとしたその時、既に母親は息を引き取っていた。自分に辛い思いをさせ、恨めしい気持ちだけを残して逝ってしまった母親に泣きながら訴えるマリア。本当は愛したかったのに、それが生きている間にできなかったことへの後悔の叫びが胸に迫りました。
死を考えるマリアの前にキリスト教の伝道師ステファノが現れる。どんな仕事をしている人間でも、心から悔い改めるものを神は決して見捨てはしない。そしてマリアは、新たにキリスト教徒としての人生を歩むことになった。この時の子供のようにあどけない笑顔を浮かべるマリアの顔が印象的でした。
2幕のオープニングはエルサレムを目指すパウロ達が、客席通路を通って登場!すっご〜〜〜く疲れた!といった様子に会場は大ウケでした。
一方パウロの存在するエルサレムの神殿においては、キリスト教は律法を侮辱する異教団体として、弾圧の対象となっていた。商売の為(実際はパウロが心配だった為)、エルサレムに来たリディアから、マリアがキリスト教に改宗したことを聞かされたパウロはステファノを憎み、彼を処刑することに賛同してしまう。
ステファノの処刑が行われた直後、パウロとマリアは相対する人間として出会うが、二人の間には以前より深い溝ができていた。マリアは、子供の頃の優しかったパウロがなぜ冷たい迫害者になってしまったのか理解できない。本来の自分を取り戻して欲しいと訴えるマリアに、パウロは沈黙するばかり。たとえ殺されてもパウロを愛し続けると言い残してダマスコヘと旅立ったマリアを追うように、キリスト教迫害のためにパウロもまた旅立つ。
毎夜、闇の中から聞こえてくる声(パウロの良心の声)は、パウロを苦しめ続けていた。
キリスト教迫害のもとに残忍な殺戮を続けながら、かろうじて持ちこたえていた彼の精神のバランスは限界に達していた。闇の中で迷いおびえるパウロの耳にステファノの声が響く。「己のしていることを観よ」と。律法が伝えている本来の意味が、権力者たちの中で捻じ曲げられ、利用されていることに気付いたパウロは、マリアと共に自分の信じる道をもう一度選びなおすために、故郷に旅立つ。どんなに屈辱的なめに遭おうとも、迫害され命を奪われることになっても、人間の心の根底にある愛情を無視しては生きてはいけないとようやく悟ったのだ。パウロの運命はいずれ悲惨な結末を見ることになる。しかし、このときパウロは幸福の光に包まれていたのである。
主役・パウロの吉野圭吾さん。優秀で、繊細な青年パウロによく似合っていました。すごく優秀なんだけど、魅力的でみんなから好かれる好青年といった感じでした。
ヒロイン・マリアの真織由季さん。宝塚時代に1度男役姿を拝見していましたが、その頃からはまったく想像もつかない可愛らしいマリアでした。笑顔の素敵なところはぜんぜん変わっていませんでした。
リディア役の寿さん、ステファノ役の山形さんが短い出番で強烈な存在感、インパクトでした。寿さんのジャズっぽい歌、山形さんのシャウト系の歌、どちらもかっこよかったです。
パウロの親友・シモン役の藤浦さん。私は藤浦さんのセリフを聞いたのは初めてだったのですが、とても印象的な声でした。ホントにあの妖しいトートダンサーと同一人物?!というくらい若い時代ははじけていて(笑)、すごく引き込まれました。
マリアの友人・ローザ役の鈴樹葉子さん。鈴樹さんのセリフの声も初めてでした。歌もエリザベートでチョットだけ(♪花嫁はいかがですか〜 と ♪あ〜りますっ 卵の白身にコニャックを3杯〜)聞いていましたが、更に迫力のある歌声でした。アンサンブルで出ている時もそのスタイルのよさで、すごく目立っていてかっこよかったです。
観劇の前に、アメリカでの同時多発テロ事件があり、人間と宗教のあり方など色々と考えさせられました。(実際の事件の対立といわれている宗教とは違いますが)。ともすれば難解で、暗さ一辺倒になりがちなテーマをミュージカルという手法で表現した事でずいぶん分かりやすくなっていたと思います(えらそう…)。