オカリナ・ビブラート公演

R.U.R. ロボット

作 : カレル・チャペック

演出 : 篠原 要

出演(敬称略) :
ハリー・ドミン 武内 耕
ヘレナ・グローリ 柘植 陽子
アルキスト 岩田 明
ハレマイヤ 山本 真裕
ファブリ 伊原 辰哉
ドクトル・ガル 篠原 要
コンスル・ブスマン 佐藤 伸之
オルガ 島塚 美歌
ラディウス 山口 美保
マリウス、ユリウス 下田 耕二
ヴァルトル ディーニャス宮川
スラ 加藤 明香
ロボット・ヘレナ 篠原 寿子
プリマス 長縄 龍郎

日程 : 2001年7月12日(木)〜7月15日(日)

会場 : こまばアゴラ劇場

観劇日:7月14日(土) 18:00〜
あらすじ&感想

人類はロボットを人間の代わりの労働力として扱うことを当然の事にしようとしていた。彼らは一切の感情を持たず、黙々と与えられた役割を忠実にこなしていくだけだった。

舞台は世界中のロボットの生産を一手に引き受けるRUR(ロッサム・ユニバーサル・ロボット)社。総支配人ハリー・ドミンのもとに、大統領令嬢、ヘレナ・グローリがやって来ます。このシーンのドミンとヘレナの掛け合いが面白い!ヘレナの言おうとする事をすべて先回りししまうドミン。訪ねてきた人がみな同じ質問をするので、答えがつい口をついて出てしまう彼。ヘレナに「どうして、最後まで喋らせてくださらないの?」と言われてもまた先回りしてしまうドミン…

工場の見学をしたいと訪ねてきたヘレナ。実はロボットの権利を擁護する団体(人権擁護団体)の所属員でした。そうとは知らないドミンは彼女にロボットの誕生の話を聞かせます。若く、魅力的なヘレナにメロメロ〜(死語?!)といった様子のドミン。そして秘書のロボット・スラを呼び寄せ、ヘレナに自分の体を開いて見せるように命令します。「そんなことをしたら死んでしまう」というへレナ。ドミンはスラに「死ぬのが怖いか?」と尋ねますが、感情をを持たないロボットは「わかりません」と答える。彼(彼女?)らにとって死ぬ事はただ単に動かなくなる事に他ならないのです。

労働者も事務員も働いているものはすべてロボットであると説明するドミン。正午になり支配人室にRUR社のスタッフ達がやってきます。ドクトル・ガル、アルキスト、ハレマイヤ、ファブリ、コンスル・ブスマン、皆ひと目で彼女に心惹かれてしまいます。ドミンの説明から彼らをロボットと勘違いしてしまうヘレナ。労働者達はロボットでも、会社の幹部達は人間だったのでした。ロボットの権利を主張する彼女の話を皆は笑って聞き流してしまいます。

彼女がRUR社にやってきてから10年目の記念日。ヘレナのもとには帰ってこない彼女を心配して姉のオルガがロボットのフリをして紛れ込んでいました。他の皆は彼女にそれぞれにプレゼントを用意します。真珠のネックレスや、カメオのブローチ、彼女のために作った花。ドミンからのプレゼントは船・ウルティムス号でした…

何か落ち着かないドミン達。言い知れぬ不安を覚えたヘレナは部屋にあった書類を燃やしてしまいます。郵便物の定期船が来ないため、1週間前の新聞を読むとそこには戦争の記事や、人口統計が載っていて、新生児の出生は皆無と書いてあります。

やがてドミン達の落ち着かない理由が明らかになってきます。ロボット達が人類の滅亡を企てていたのです。1週間ぶりに来た定期船には郵便物はなく、代わりに「人類を抹殺すべし」と書かれたビラが入っていたのでした。

感情を持たないロボット達がどうして叛乱を起こすのか…きっかけはドクトル・ガルの実験でした。本来なら廃棄されるべき『感情』を持ち合わせてしまったラディウス。彼をリーダーとしてロボットたちは人類を滅亡させようとしていたのでした。

人が残っているのは、発電所とドミン達がいる場所だけ。ウルティムス号に乗って逃げるはずでしたが、その船(軍艦)ですらロボットたちに占拠されてしまいました。とりあえずファブリが電流の流れる柵を築きます。ロボットたちは攻撃を仕掛けてくるわけでもなく列をなしてじっと彼らをみつめています。表情のないロボット達が何百、何千とじっとこちらを見ている図。想像するとぞっとしてしまいました。

しかし、ドミン達は決定的な切り札を持っていました。ロボットの生みの親、ロッサム老人が記したロボットの作り方の秘密。それがなければロボット自身ではロボットを作り出す事ができないのです。書類を楯に脱出を図ろうとしますが、その書類が見つかりません。なぜならヘレナが燃やしてしまったから…

まさに絶対絶命といったその時、ブスマンがある手段を思いつきます。会社の決算処理をしたところ、520億もの黒字があったのでした。そのお金と引き換えに逃げ出そうというのです。皆が止めるのも聞かず交渉に乗り出していくブスマン。その結果は…ブスマンは命を落としてしまいます。(はっきりとは語られていませんが、人間の貨幣価値はロボットには通用しないのではないかと思います。)

そして、発電所からの電気も途絶えてしまいます。それは発電所がロボットたちの手に落ちた事を意味していました。ピストルを片手にロボットたちと戦いに出るドミン達。しかしピストルを発砲しなかったアルキストを除き、皆殺されてしまいます。

月日は流れ、1人机に向かうアルキスト。人類でたった1人残った彼はロボットたちから、新しいロボットを作り出す事を命じられていたのでした。アルキスト自身もこのままでは地球上からすべてがなくなってしまうという現実を前に、自らロボット作りの研究を進めます。幾度も実験を繰り返しますが、ロッサム老人が記した書類もなければ、ガルやハレマイヤも記録を残していなかったので、建築技師であるアルキストには調べても調べてもロボットを作り出す事ができません。

毎年のように何万台ものロボットが死んでいくという現実に業を煮やしたラディウスはついに自らを解剖するように命じます。その実験も失敗し、疲れて眠ってしまうアルキスト。そこへ2体のロボット、プリマスとヘレナが部屋に入ってきます。

彼らは部屋の中を色々と探りまわり、花を綺麗だといって眺めていたりします。やがてアルキストが目を覚まし、他のロボット達と明らかに様子の違う彼らを解剖にかけようとします。その時、ロボットたちはお互いをかばい合ったのです。一切の感情を持たないはずのロボット。しかしその2体だけは違いました。実はガルが実験した中では失敗作とされていました。感情を持った彼らを見てアルキストは絶滅を免れる一筋の光を見つけたように思います。



80年も前に書かれたお話とはおもえない程、現代にあったお話だったと思いました。ものすごいスピードで発展しつづけるテクノロジー、命を創造するという神の領域のどこまで人間は踏み込んでいいのか…とても興味深いテーマでした。

冒頭のハリーやRUR社の幹部の皆さんを観て、バブリー(死語・笑)な感じで、「こういう自信たっぷりな青年実業家っていそうだな〜」と思いました。そんな自信に溢れた人間が弱気になっていく様は驚くと同時に少しほっとしました。やっぱり人間って弱い生き物なんだって。小さな部屋の中でだんだんと精神の均衡が崩れていく様子にドキドキしました。もし自分が同じような状況になったらどうなるか…想像すると怖いですね。

劇場からの帰り道、ふと「ロボットとアンドロイドってどう違うのかな?」と思い、両方の言葉を英和辞典で引いてみました。Robot:機械人間 Android:人造人間となっていました。明確な違いは書かれていませんでした。英英辞典などで調べてみないとわからないかな…機会があれば調べてみようと思います。
驚いたのはRobotの語源。【チェコの作家、チャペクの劇の主人公の名から】となっていました。正にこのR.U.R ロボットが語源だったのです。

余談ですが、15日に話題の映画『A.I.』を見まして、こちらも同じロボットのお話(Artificial Intelligence=人工知能)がテーマでした。両方を見て私の心に浮かんだのは、「奢れるものは また久しからずや」という平家物語の一節でした。



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