★教科書傍用問題集の効果的な使い方★ 〜 『基礎からの高校数学』 高校数学勉強法より

【教科書傍用問題集の使い方の一考察】
さて,高校生になったとき「教科書」とともに渡される「教科書傍用問題集」ですが,これの使い方が分からなくて困った経験を している人は多いと思います.「教科書傍用問題集」は,上手く使えば実力向上のための大切なパートナーになってくれます. しかしながら,「教科書傍用問題集」のことを「解説がないので使えない(使いにくい)」というようなことを言い,敬遠している 人って結構います.でも,それは単に教科書傍用問題集の「性格」と「使い方」を分かっていないだけだと考えます. そこで,ここでは「教科書傍用問題集の効果的な使い方」について考えてみたいと思います.

【教科書傍用問題集の役割とは?】
まず,「教科書傍用問題集」の役割とは何か? を考えて見ますと,これは文字通り「検定教科書と併せて使う問題集」です. では,「検定教科書」というのはどういったものかと考えると,これは「定義」や「公式」「定理」の解説と,代表的な問題を 通じてそれらの使い方を提示するのが役割です.しかしながら,「検定教科書」というのは様々な制約がある故に,扱える内容に 限界があるので,その補足および反復練習をするための「問題量」を提供するのが「教科書傍用問題集」の役割です.つまり 「定義」や「公式」「定理」の意味というような概念的な部分の「解説」はあくまで「教科書(およびそれを使った授業での 教師の説明)」役割であり,「問題の解き方」といったようなテクニカルな部分の「解説」は「参考書」の役割なのです. このような役割分担が決まっているのですから,そもそも「教科書傍用問題集」に詳しい「解説」を求めるのは筋がちがうと思います.
 また,「受験数学」において,受験生は「定められた時間内で正確にかつ効率よく問題を解く」という処理能力が高いことが要求 されているわけです.では,その「処理能力」の根幹をなすものは何なのでしょうか? それは「計算力」です.「計算力」 というものはスポーツと一緒です.知識を得ただけでは「計算力」という能力は向上しません.ある程度の「反復練習」の量を こなしてはじめて身に付くものなのです.教科書傍用問題集の使用目的の一つは,まさに「受験数学における基礎体力である 計算力を向上させる」ことなのです.別のことを「使用目的」にするならば,また違った参考書や問題集のほうが良いという結論 に達することもあるでしょうが,少なくとも1,2年生の段階であれば,授業で教わったことを「教科書傍用問題集」を使って 「反復練習」して身につけるということは非常に大切なことです.また,よく「勉強というものは,量より質が大切である」など という人がいますが,少なくとも「計算力」という能力は,「質の良い問題を大量に解く」方がより確実に実力を伸ばすことが 出来るというのは自明です.このように「参考書」や「問題集」というのは,特定の書籍を使うことそのものが「目的」なのでは なく,使用することで「目的を達成するための一つの手段」に過ぎません.このことを忘れて,「あの参考書・問題集のここは 使える」「いや,使えない」などと議論しても何の意味もありませんし,ナンセンスであるとさえいえます.しっかりと 「使用目的」を明確にして「参考書」や「問題集」は使いましょう!

【教科書傍用問題集を使用する際のポイント その1 〜教科書と併用すること〜】
「教科書傍用問題集」はその「問題集」の性格から,ほぼ確実に教科書のどこかに類問が載っています.もし,それが教科書で 扱えない内容なのだとしたら,必ず「問題集」のどこかに「例題」や「解説」「答案例」の類が付いているはずです.だから, 「教科書傍用問題集」に収録された問題に向き合ったとき「解き方」が分からない問題が出てきたならば,まず「検定教科書」 を参照することが筋道です.国語や英語で分からない言葉や単語が出てきたら,誰でも辞書を引くと思います.この作業は, それと一緒です.これを面倒くさがってはいけません.一度授業で教科書を見ているとはいえ,繰り返し見直すことで理解が 深まることが往々としてあるからです.知識を習得するには,地道に反復練習するのが結局は一番の近道です.
 また,「検定教科書」に載っている問題と「教科書傍用問題集」に載っている問題が微妙に問題パターンが違っていることが あります.でも,ここでめげてはいけません.どこが違うのかということを少しでいいですから考えてみるのです.「問題集の この問題は,見かけは違うけど,本質的なことは教科書の問題と同じだ!」ということをもし見出せたなら,そのときあなたの 数学的な能力はアップしています.「類推」「演繹的思考」といった「数学的能力」を向上させるにはこういったステップを 踏むことは非常に大切です.それを「分からない!」の一言で片付けている間は,いつまでたっても実力は向上しない,とあえて 言わせていただきたいです.ただ,「検定教科書」というのは,必要なことが簡潔に纏められている反面,くどくどとした説明は ありませんから,初学者の段階では教科書の記述を読み解くことが難しいということも考えられます.まあ,それをかみ砕いて 説明するのが教師の任務の一つなんですけどね!

【教科書傍用問題集を使用する際のポイント その2 〜参考書と併用すること〜】
「教科書傍用問題集」を使っていて,解けない問題が出てきたときに,教科書を参照しても理解できなかった場合はどうすれば 良いのでしょうか? そこで,でてくるのが「参考書」です.「参考書」というのは本質的には教科書と同じ内容を説明をするに しても,「検定教科書」とはまた違った角度からの「解説」がされていることが多いです.なぜなら,「検定教科書」というのは 「学習指導要領」に沿って,高校生が学ぶべき基本的な定義や定理,公式といった知識を代表的な問題を通じて解説する書籍です から,それらの知識を様々なパターンで使う,指導要領で定められた「科目」や「分野」を横断した,知識を融合して使う問題の 解き方を解説する,といったようなことは当然ながら考慮されていないわけです.一方,「参考書」というのは基本的な知識の 習得ということにも一役買ってくれるのはもちろんですが,「検定教科書」と決定的に異なるのは「問題を解く」のに必要な知識 や考え方を「解説」することに,より比重を置いていることなのです.「参考書」を辞書的に使って類問を探して,「参考書」の 「解説」や「解き方」を参考にしながら教科書傍用問題集に取り組むということも,また物事を違った角度から眺めるという経験 を積むことが出来るので,数学的能力の向上に一役買ってくれるはずです.それでも分からなければ,学校の教師に分かるまで 説明してもらえばよいと思いませんか?そういった「勉強の手順」をキチンと踏んでもいないのに,あの参考書・問題集は 使える!もしくは使えない!だの議論しても意味はありません.そんなことをしているまに1問でも問題を解くほうがよっぽど 有意義な時間の使い方です.ごちゃごちゃ「参考書の評論」をしている暇があったら,その時間に1問でも多くの問題に取り組む! これが実力向上の秘訣です.当たり前のことを当たり前のようにこなせるようになる事も,「勉強」を通じて学生時代に身につけ なければいけないことです.それを早い段階で身につけて,定期考査や模試で好結果を残すといったような「成功体験」を積む ことは非常に大切です.そういった「経験」を積み上げるうちに「勉強」することの意味というものも理解できるようになると 思います.