2005年7月のハリケーンEmilyによるメキシコ東部ヌエボレオン州
モンテレー市周辺シエラマドレ山地・丘陵における土砂災害
The landslide disasters induced by the precipitation with
Hurricane Emily in July 2005,
at the cities of San Pedro and Monterrey along the mountain range of Sierra Madre Oriental, Nuevo Leon, Mexico
<Version 18/Dec./2005>
Quisiera expresar mi gratitud más profunda para ayudarme en
los campos de Nuevo Leon, ![]()
al
Dr. Israel Cantu Silva(UANL y SEMARNAT), Ir.
Jorge Garza Esparza(San Pedro G.G.) y los miembros del Defensa Civil de S.P.G.G
今回の2005年台風14号災害と比較する意味で、ハリケーンKatrinaに代表されるように記録的な規模と発生数を見た大西洋−カリブ海のハリケーンによる土砂災害についてその一部を紹介します。
アメリカのテキサス州に隣接するメキシコ東部モンテレー市(Monterrey、地下鉄2路線や都市高速道路を持つ工業都市。人口は150万人程度で、周辺人口は300万以上と言われる)に隣接するサンペドロ市(San
Pedro Garza Garcia)に位置するシエラマドレ山地のチピンケ自然公園(El parque
ecologico de Chinpinque)に、今回の研究で設置した雨量計では、7月のハリケーンEmilyで、総雨量約420mmを記録しました。
これは、台風14号に比べては少ないですが、著者らの観測によると、この地域の雨上がり後の土壌水分量の減少率が地質の類似した福岡の対象森林流域(中生代から古生代の粘板岩、片岩類)に比べて遅いこと(降雨後の初期減少速度にして10倍以上、半減期でも10倍程度)などが判明しつつあり、この地区では降雨の土質強度低下や地すべりへの影響が長時間続くことが考えられます。
また、この地区は都市化に伴う斜面の開発圧力が大変強く、斜面災害・土砂災害と森林環境の破壊が強く懸念されています。

モンテレー市などの位置図 衛星写真(褶曲などが良く分かる) ハリケーンEmilyに伴う雨量(図中右の赤いライン)
1)チピンケ自然公園内の表層崩壊 Camino Las
Aranas
崩壊土量約263m3、平均勾配約32度の表層崩壊で、公園用循環道路の排水が影響して発生した可能性がある。地質は中生代の粘板岩・片岩(lutitasなど)である。植生は主としてコナラ林(Quercus encinos)と松林(Pinus pinos)である。

Camino Las Aranas Camino
Vado Uno
<久保田撮影(以下断りのない写真もすべて)>
2)チピンケ自然公園内の表層崩壊拡大 Camino Vado Uno
崩壊土量約2270m3、平均勾配約34度の表層崩壊で、公園用循環道路の退避場の盛土が影響して拡大発生した可能性がある。
どちらにしても、周囲の自然斜面は40度以上の勾配があり、不安定な斜面であることは否めない。地質は中生代の粘板岩(lutitas)である。植生は主としてコナラ林(encinos)。
3)モンテレー市サンヘロニモ地区(San Jeronimo)の地すべり
新興住宅地の丘陵斜面に発生したもので、ハリケーン後も拡大を続けており、周辺住民の大規模な避難が行われている。長さ約120m、幅約125m、深さ約9m〜10m、崩壊土量約15万3千m3、地表平均勾配約12度(脚部は7度程度)の地すべりで、地質は古生代〜中生代の石灰岩(calizas)からなる。この石灰岩層は大規模な褶曲の影響を受け節理の発達が著しく、ブロック化している。
節理で分断された背斜軸周辺の層理がすべり面になって発生したものと思われるが、対策としては、当初の滑落崖部の亀裂への雨水浸透の対策と上部の排土、及び警戒避難、移動土塊上のビルと家屋の取り壊しが行われている。、地下水排除工や杭工などその他の対策は行われていない。また、将来の対策計画もないようであった。移動量も測量でのみ観測・確認されている(地すべり技術者の不在?予算の欠乏?)。
現在も、滑落崖上部の住宅地に、幅2mで長さ数十m程度の亀裂が新たに現れており、メキシコ第2とも第3とも言われる百万都市モンテレー市の中心部に近い場所でもあるので、今後の動向が心配される。

サンヘロニモ地区(San Jeronimo)の地すべり全景と被災したビルなど

サンヘロニモ地区地すべりの頭部と滑落崖上の幹線道路・住宅街

サンヘロニモ地区地すべりの滑落崖 脚部・末端部

サンヘロニモ地区地すべり直下の住宅街
(避難勧告が出ており、車両はモンテレー市レスキュー隊Defensa Civilが警戒中)
4)チピンケ地区森林斜面及びその他の災害

渓流からの土石流による道路の埋没(左2つの写真)、法面崩壊など(右の2つの写真)<Dr.
Israel Cantu Silva 提供>
5)セロ・デラ・コロナ地区(Cerro de la
Corona)の崩壊危険斜面と伸縮計設置
崩壊の危険と人家の被害が心配されている斜面(集塊岩と下部は粘板岩)で、データ収集のため試験的に伸縮計を設置しました。

伸縮計設置をした危険斜面(伸縮計の先端の移動し崩壊する恐れのある岩塊)と保全対象の住宅地
伸縮計設置状況(サボテンの鋭利な棘で怪我が多く大変です)
<参考> ここで触れたどの崩壊・地すべりも、下のように移動土塊体積Vと等価摩擦係数Mfの通常関係の範囲に入るものです。

最後に、研究協力者のヌエボレオン州立自治大学(UANL)森林科学部のIsrael Cantu Silva 準教授(連邦天然環境資源省ヌエボレオン支局兼務)、サンペドロ市都市開発環境部のJorge Garza 環境課長・主任技師、同市のレスキュー隊Denfensa Civil隊員の皆様には大変お世話になりましたので、記して感謝いたします。
.<筆責 久保田>