宮崎県田野町 鰐塚山の崩壊と土砂流出
(2005/12/26 暫定第3版)
九州大学大学院 農学研究院 森林保全学研究室
鰐塚山では、総雨量が1000mmを超え、6個の大規模の崩壊が生じ、そのうち3個はかなりの規模のものであった。国交省や宮崎県の調査によると下流の「鰐塚渓谷いこいの広場」への流出土砂は500万m3に上ると推定されている。
写真上 朝陣野側の崩壊 写真 中・下 崩壊流下部(渓床との比高は20mを超える。)
◇ 地質は四万十累層〜日南帯で、この周辺では砂岩が卓越するとされる。滑り面の特徴や発生機構については今後の詳細な調査が必要と考える。
◇ 崩壊近傍の植生は主としてスギの人工林で、胸高直径50cmを超えるものも多い。
◇
最大規模の朝陣野側崩壊(写真上)の崩壊部は、航空写真・地形図・実測値などより長さ約270m、幅150m程度、平均勾配約27度と推定できる。
流下幅と高さは、写真下の地点で、それぞれ約86mと20m。いこいの広場付近の堆積幅は約185m、堆積勾配は3度程度であるが、合流部の朝陣野側渓床では10度以上ある。
◇ 航空写真と地形解析からは、流下距離は、広場に近い朝陣野側の崩壊でも2kmを越えると思われ、等価摩擦係数は0.211程度と推測される。
また他の大規模崩壊の等価摩擦係数も本川上流の崩壊群で0.176〜0.199程度、うつら谷上流の崩壊群で0.231〜0.265程度と解析された。
写真 土砂が乗り越えた丘、流下部からいこいの広場を見る(土砂に埋まった研修棟が見える) 崩壊流下部と本川合流部
1階部分が流出土砂に埋没したいこいの広場研修棟 写真右に管理棟(砂防施設の整備で被害はなかった) 土砂流出状況
いこいの広場の土砂流出状況 崩壊土砂が乗り越えた丘 崩壊土砂と管理棟(中央に小さく見える)
その他の大規模崩壊と流出土砂
砂防ダム上流の堆積 渓岸崩壊1(長さ112m、幅33m、深さ約5m、勾配39度、地質:砂岩) 渓岸崩壊2(長さ75.5m、幅34m、深さ約2m、勾配39度)
渓床の侵食状況
Up Dated on 26/Dec/2005