Ver.2024版
要約版: https://tkubota02.wixsite.com/methome01
年間を通して(特に梅雨・台風時期や強い地震後は)豪雨による土砂災害や洪水に備えましょう。
ENGLISH (For the time being, under construction) |
空模様などを写真に撮ってみました。
メキシコ・東シエラマドレ山脈やドイツ・チューリンゲン地方と山地災害など
近年、西日本などでは「強い雨」が増加傾向にあります。これは気候変動すなわち地球温暖化のために海水面から水蒸気の供給が増加したことや上下層大気の気温差増加に伴う大気の不安定化などが原因と考えられます。 例えば九州地方では、約40年間で年最大時間雨量が20mm/hr程度、年最大日雨量が100mm/day程度も増加している場所があります。この増加傾向はケンドールの順位相関などでは統計的に有意です。また、30mm/hr以上の強い雨の「発生頻度」にも増加傾向が認められます。
加えるに、強雨の増加の為か、大規模な土砂災害発生間隔が近年統計的有意に短くなっている地域があります(福岡県や熊本県など:ケンドールの順位相関、有意水準5%)。しかし、同じ期間、全国的に森林の伐採放棄地は減少傾向で(国交省国土計画局、国交省Web:2009)、かつ1986年以降は樹齢20年生以上の林地が増加、根系の発達に伴い表層崩壊は発生し難くなっています(多田:環境情報科学50-1、2021)。
増加の程度の差はありますが、同様のことが2020年7月の熊本県球磨川流域や大分県日田市など2020年九州北部豪雨災害箇所でも認められます。
そして、この結果を(実際の崩壊斜面のFEMやLEMなど数値シミュレーションつまり降雨浸透解析と斜面安定解析を使用して)山地斜面の安全性=斜面安全率評価に適用すると、降雨の増加がない場合よりも5%〜30%も斜面が不安定になることが分かっています(PDF_英文: 降雨増加と山地斜面安全性、PDF和文:流木発生)。この結果は、良好な森林の有無に関係なく生じます。早めの避難が重要です。
ただし、森林伐採と林地での山崩れ(崩壊面積)とは明瞭な関係があるようです(PDF: 自己組織化巨視的観点の森林の表層崩壊抑制効果、歴史的神社の水害と森林、他にもリンクのPDFを見てください)。
また、海水面温度の上昇は、スーパー台風発生や台風が勢力を弱めずに接近・上陸する原因となる他、日本近海で台風が発生して接近上陸までの時間が短くなるなど台風災害の激化につながることが考えられますので、台風に伴う土砂災害発生にも注意しましょう。 大雨で山崩れや土石流から避難する場合は、新型コロナ感染症対策も考慮して、自宅2階や近所の丈夫なコンクリート建物など、普段から指定避難場所以外の安全な場所も探しておき、分散避難を心がけるのが大切です。
簡略版のHPもあります。天気と雲にしか興味のない場合や、最後まで見るのが面倒な場合は要約版や簡略版へ!
はじめ ようこそ!
さいしょ 身近な土砂災害の用語 〜土砂災害とは何かもう一度考えましょう〜
ほんだい 大切な森林の役目 〜森の役目を考えて見ましょう〜
おわり リンク
身近な土砂災害の用語 〜土砂災害とは何かもう一度考えましょう〜
この解説は、20年を超える現場調査と研究の経験に基づくものですが、あくまで個人的なものです。公式な解説は、
砂防広報センターや国土交通省、林野庁などのホームページをご覧ください。
また、危険な渓流や斜面(土石流危険渓流、急傾斜地崩壊防止地域、山地災害危険地区、保安林など)や
雨量(避難基準雨量や通行止めの雨量)などについては、各都道府県、地域振興局、土木事務所、国の工事事務所、森林管理センターなどのホームページを参照ください。
土石流 Debris Flows
@どんなもの?→ 大きな岩片や転石・砂礫(火山では火山灰など)と水が混ざって一体として時速数十kmの高速で流れ下る現象。
流木などを含んでいて、被害を大きくする事が多いです.
Aこんな場所・場合に起こる!→ 勾配が約15度以上の渓流で、川床に土砂が堆積して溜まっている場合。
あるいは、過去に何度も渓流沿いの山や周辺の山が崩れているところ。
Bこんなときに起こる→ 大雨の時や、強い地震発生の時。
(時間雨量数十mm以上、連続して約100mm以上の雨が降った場合などですが、この危険な雨量は斜面の勾配・地質などで場所ごとに変わります。活動中の火山や大きな地震の後ではもっと弱い雨で起こることも。)
崖崩れ、山崩れ、崩壊 Slope Failures
(Collapses)
@どんなもの?→ 裏山やがけなどが高速で崩れる現象。数百〜数万m3の規模ですが、もっと大規模なものもあります。
Aこんな場所・場合に起こる!→ 勾配が約30度以上の斜面で高さが数m以上ある場合。
(高さは、2mでも被害が起こる場合もあり得ますが、これも斜面とその下にある家などの位置によって違います。)
Bこんなときに起こる!→ 大雨の時や、強い地震発生の時。(土石流に準じますが、危険な雨量は斜面の勾配・地質や森林の状態などの条件で場所ごとに変わります。阪神大震災のような大きな地震の後ではもっと弱い雨でも起こるので注意しましょう。)
地すべり Landslides
@どんなもの?→ 山や丘などがゆっくりと滑り落ちる現象。
(国際的には、Landslidesには、高速で崩れる崩壊や土石流も含めた土砂の移動現象の意味があります。)
Aこんな場所・場合に起こる!→ 勾配が約10度以上の斜面で、構造線周辺や温泉地、風化の進んだ変成岩や泥岩などで出来た山など、地すべりのすべり面とすべり面粘土が出来やすい地質のところ。
Bこんなときに起こる→ 大雨の後や、雪国では雪解け時期、強い地震発生の時など。ダムの貯水で地下水が変化した時の他、斜面を切土などして人工的に改変した場合にも起こる可能性があります。(危険な雨量は、地下水の状態、斜面の勾配・地質などの条件で場所ごとに変わります。)
警戒・避難基準雨量 Evacuation/Warning Critical Precipitation (Critical Rainfall)
@どんなもの?→ 大雨の際などに避難の目安となる雨量。
過去数日に降った雨による地盤の緩み(地下水の状態)も考慮して計算されたもので、数種類の方式があります。
各都道府県では、地域ごと(市町村か土木事務所管轄範囲ごと)に、時間雨量と連続雨量それぞれに過去数日に降った雨を考慮した”実効雨量”に基づく基準を検討していると思います。
最近では、これに短時間降水予報(1時間〜数時間後の雨量予測)を組み合わせて用います。
気象庁は、地下水の状態を地下に貯水タンクがあると仮定するモデル(タンクモデル)を用いて、土壌雨量指数と言う土砂災害危険度を計算して警報の発令などの参考にしていますが、これも警戒・避難基準雨量の一種です.
Aこんな時に使われる→ 梅雨・台風時期に大雨などで被害が出そうな場合、市町村長が出す避難勧告の参考として使用される場合もあります。渓流・斜面巡回・監視の強化や防災対策の準備体制開始などにも使われます。
◆ 大切な森林の役目 〜森の役目を考えて見ましょう〜
@森林土壌が雨をよく地下に浸透させて、浸食や洪水を防ぎ、渇水の時は地下水・河川の流量の減少を緩和する。
A樹冠(葉)と落ち葉や下草などが雨による浸食を防ぐ。
B落葉層が地中の水分蒸発を緩和する。しかし、その代わり樹木が水分を消費する。
C樹木の土壌水分消費により土の強度が増して、崩壊発生への抵抗力ができる。
D根系が土を補強する。また、錨のように岩盤に表層を固定するので、浅い崩壊を生じにくくする。
比較的風化の進んでいない堅い岩盤の上部など根の深さが一様にそろうような場合はかえって森林が崩壊を助長する時もあります。
Eその他、風を防ぐ、気温の変化を緩和する、CO2を吸収する、大気汚染を浄化する、生態系を維持する、景観を維持する、木材を供給するなど多様な役割を果たします。
Fただし、土壌が浅い場合は樹木の重さが斜面を不安定にする場合や、流木の原因になるなど負の一面もあります。
◇ こちらも見てください→ 1) 台風による風倒木 , 2) 海岸林 ◇
ギリシャ北部テサロニキの山火事による山地の荒廃2004年(左:背後は市街とテルマイコス湾)と
ネパールの山地森林斜面の荒廃2007年(右:カトマンズ近郊)
◇ リンク
□ 各種団体
以下は、リンクの確認がすべて済んでいませんが、とりあえず挙げてさせていただきます。
● 砂防学会のホームページ ----- ○ 林学会
のホームページ(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jfs/) -----
○ 緑化工学会のホームページ
● 地すべり学会のホームページ
----
------- ● European Geosciences Union (EGU)
● International Union of Forestry Research
Organizations(IUFRO)
2024年3月更新。 Mar. 2024, Updated. 九州大学名誉教授 Kubota, Professor
Emeritus, PhD.